トレンドではなく、課題を追え。
まずは問題を正しく理解しよう。コードは単にその答えを書き留める手段にすぎない。
プログラムとは、問題を解く方法である。
いま、あなたの手元には明確な問題があり、その解法は繰り返し可能な一連の動作に圧縮できる。
あなたのプログラム = 需求 →(抽象/分解)→ 実行可能な手順 → 安定した結果
それは偉大である必要も、汎用的である必要もない。安定してトラブルを静けさに変えられるなら、それが良いプログラムだ。
プログラム/サービスは商品である
プログラムが書けない人は、ソフトウェアを購入したりサービスを購読することで、他人の解決策を借りる。
供給側が売っているのはコードではなく、持続可能な信頼性と継続的なメンテナンスだ。
Vibe Coding:もっと多くの人が自分で書けるように
Vibe Coding とは以下を指す:
- 自然言語で意図を説明し、モデルが実行可能なプロトタイプを返す
- 対話を重ね、「あいまいな感覚(vibe)」を「明確な挙動(code)」に収束させる
参入障壁は取り払われた:
- 初心者は文法→フレームワーク→機能実装という順番を踏まなくてもよい
- まず「問題をはっきり説明」し、モデルに「動くドラフト」を作らせてから徐々に磨けばよい
これは、これまで一度もプログラムを書いたことがない人が、自分の小さな課題を解くために初めて「自作プログラム」を書くことになる、ということだ。
小規模の課題は、大規模ゆえの多くの難点を回避できる
問題の規模が小さい(1人だけの作業フロー、少量のデータ、限定された同時処理)なら:
- アーキテクチャの複雑性:マイクロサービス/メッセージバス/分散合意は不要
- SREの難題:可用性 99.999% も監視も不要
- 協働/ガバナンス:10チーム間にまたがるインターフェース仕様は不要
- コスト制約:小さなサーバ1台で十分
この規模では、かつてはエンジニアチームでなければ越えられなかったハードルが、大きく下がる。
例えばブログを公開する場合、Quaily というコンテンツプラットフォームのように何千人もの著者にサービスを提供する場合は、データ増加に耐えるアーキテクチャが必要だ。しかし、自分のサイトを作って自分の記事だけ扱うなら、件数が少なく、インデックスすら不要なこともある。
ツール系は逆風、授業/知識販売は追い風
ツール系プログラムやサービスには明らかな逆風が吹く。もし価値が「いくつかのよくある手順をつなげる」ことだけなら、ユーザーは Vibe Coding で半日もあれば十分なコピーを作れてしまう。あるいは AI の対話画面内だけで完結させるかもしれない。
そうして機能の差別化によるプレミアムは縮小し、長尾ニーズはユーザーが自力で満たす(例:画像加工)。
一方、授業、知識販売、方法論には追い風となる。「問題を明確に説明する」「要件を正確に伝える」ことの重要性が高まるからだ。
良い教師は、問題の記述方法、結果の検証方法、反復改善の方法を教える。これは Vibe Coding の成果物の質を直接高める。
規模の壁:Vibe Coding はソフトウェア工学の代わりにはならない
おもちゃの規模を超え、外向けにサービスを提供する段階になると:
- データ規模:TB/PB級データ、ソフトウェア品質管理、権限分離
- トラフィック規模:キャッシュ、フェイルセーフ、コスト最適化
- 組織規模:後方互換性、変更管理、安全遵守
- 信頼性:SLA、災害対策訓練
これらは「数行のプロンプト」で一気に解決できるものではない。コンピュータ工学の知識と能力がない人は、現時点では Vibe Coding だけで大規模システムを構築することは不可能だ。
どんな場合に Vibe Coding は脅威にならないのか?
もしプログラムや事業の商業的価値が、規模の経済やネットワーク効果、流通、コンプライアンス壁、データの囲い込み、ブランドや信頼と強く結びついている場合、あるいは価値がそもそも技術と無関係(例:流通チャネル、供給側の資源、IP)である場合、Vibe Coding は代替しにくい。
例:
- 規模依存:広告プラットフォーム、決済ネットワーク、物流ネットワーク、検索/推薦システム
- 技術非依存:独占的著作権、強い流通経路、強固な供給関係、フランチャイズ、規制ライセンス
Vibe Coding が解くのは、意図を小さく美しい動作可能な試作解に落とし込むことであり、万能の鍵ではない。
プロダクトとチームへの戦略的ヒント
- 簡単に模倣されないものを作る:防衛線はデータ、ネットワーク効果、ブランドに置き、ボタン背後の3行コードには置かないこと
- 問題記述能力をプロダクト化する:ユーザーが自然に問題を説明できる設計にすると、本当のニーズに近づける
- 工学的能力は規模が必要な場面に投入する:小さな問題は Vibe Coding で素早く実装し、大きな問題は引き続きエンジニアで対応する
初めてプログラムを書く人へのメッセージ
初めてプログラムを書くとき、アーキテクチャをどれだけ優雅にするかは考えなくていい。まずは今日、何を完全に解決できるかを考えよう。
問題を明確にし、動かし、結果を確かめよう。
それで十分だ。